今日の公演は聴き所の多いプログラムとなっている。まず、何といっても目玉は神尾さんのヴァイオリンだ。今年のチャイコフスキーコンクールで優勝した記憶も新しいが、地元への凱旋公演となるのも意義深い。次にオッコ・カムが指揮台に登るということ。北欧を代表する指揮者であり、人気・実力ともに高いので期待するところが多い。あと、今日の公演にはロンドン交響楽団の首席ホルン奏者デイヴィッド・パイアットもスペシャルゲストとして参加している。これらの話題性だけでもワクワクする演奏会なのだ。
しかし、現実は少しさびしいものとなってしまった。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲から話をすると、オケがあまりにもお粗末!パートごとのバランスが悪いだけでなく、明らかにソリストに気を使いすぎな弱々しさ。本気で何の曲だか分かりませんでした。オッコ・カムもそれらをまとめられなかったどころか、逆にオケを惑わすような指揮振りにも見えた(原因は指揮者?!)。肝心の神尾さんのヴァイオリンは、さすがに存在感がありました。あまり聴いたことがないような独特の音色。何ていうのか、点や線ではなく、面で音を表現しているというのか・・・ワイドな感覚がありました。早弾きでもなく、技術を見せびらかすわけでもなく、ゆったりと歌っていたのが印象的です。ただ、せっかくのヴィルトゥオーゾ曲なので、もう少し見せ所を作って欲しいと思いました。指揮者もあんまり見ていなかったし・・・。オケとの絡みが良くないために演奏自体は退屈でした。
ここで珍しくアンコール。マスネ「タイスの瞑想」。チャイコフスキーよりは良かったです(笑)。でもあんまり面白い演奏とは・・・オケのメンバーもあまり納得できてなかったのか、コンマスの豊嶋さんはサッサと退いてました。。。後半は、実は一番の期待を持っていたラフマニノフ。今年3月の京響の定期では素晴らしい演奏を聴いているので、「感動をもう一度!」ってな感じでした。その期待は冒頭からむなしく崩れ去った。やはり原因は指揮者にあるようだ。全く揃ってない。。。ラフマニノフの美しい旋律ですら曇りガラスの向こうにある感じで浮き出てこない。それでも第2楽章は聴きモノだった。スピード感こそ今一歩だったが、パイアットのホルンが期待通りの大活躍。「この曲をロンドン響で聴いたら・・・」と妄想にふけながら聴いていましたが、1人入るだけでここまで音色がよく変わるもんです。
一番お気に入りの第3楽章は、印象が薄い演奏でした。クラリネットの長いソロもマットな音色で、哀愁や叙情が感じられず残念だった。そう思えば、京響の演奏は爆裂的な名演だったんだなぁとしみじみと感じた。終楽章はそんなに記憶ないですが、流れに任せて聴いてました(汗)。最後は派手に締めたので観客は大喜び。うーん、全体を思い返しても、ティンパニやトランペットの浮いた音といい、違和感の多い演奏だったなぁ。
それでも、アンコールはさすが本場という演奏でした。シベリウス「悲しきワルツ」。最後に良い演奏が聴けたのでまずまず気分良く帰ることができたかな?
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