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2006年5月28日 モスクワ放送交響楽団
(兵庫県立芸術文化センター)

演奏曲目および評価

チャイコフスキー  祝典序曲「1812」
チャイコフスキー  弦楽セレナード
ショスタコーヴィチ  交響曲第10番



演奏者(指揮者・ソリスト)

指揮: ウラディーミル・フェドセーエフ

感想・短評

多様で魅力的なプログラムを引っさげてやってきたモスクワ放送交響楽団。プログラムは良かったのだが、値段が少し高かったのか?それともモスクワ放響自体あまり人気がないのか? 2階席・3階席はかなり空席が目立った(というかガラガラだった)。

ロシアのオケと言えど、かなりヨーロッパ的で、「金管が吼え、打楽器が炸裂する!」と良く表現されるような団体ではない。2001年の来日の際に聴いた時は、そのように感じたので、今回は派手めな曲ばかりということもありロシア的な演奏にちょっぴり期待である。

最初は「1812年」。比較的有名な曲なのだが演奏機会は少ない(4月に大フィルの野外演奏で聴いているので今年は2回目だけど)。冒頭から「遅っ!」というほどかなりのスローテンポ。演奏自体は手馴れた感じだけど、バラツキがあって気になった。それにしても遅すぎて重々しい。注目の大砲は大太鼓でした。妥当な方法です。それはいいにしても、驚いたのは最後の鐘の鳴らし方と、終わらないんじゃないかと思うほどの引っ張り方。思わず「スヴェトラーノフかい!」って叫びそうになりました(笑)。やりすぎな演奏。いいですね〜。

2曲目は「弦楽セレナード」。これも「遅っ!」。よくある、切れるような厳しい演奏ではなく、冒頭から沈んで落ち着き感のある柔らかな感覚だった。昨年のバシュメット=モスクワ・ソロイスツによる弦楽セレナードとは全く正反対の演奏でした。遅いので流れるような美しさには乏しかったが、反面、普段聞き流していた第3楽章の素晴らしさが目立った。チェロの存在感が強く、これまでに体験したことのない充実した響きでした。

ラストは、5番の次に演奏機会の多いショスタコーヴィチの10番だ。これも幾分テンポが遅いため重量感があった。ソ連時代を髣髴とさせる緊迫感に満ちており、ショスタコーヴィチが意図したものが浮き上がるような好演でした。特に第2楽章の演奏は痛烈で、鳥肌が立つほどの恐怖感を覚えた。スゴかったです。第3楽章も秀逸で、楽章の終わりに向けて徐々にテンポダウンしていく様は局の内面をえぐり出すかのようで真に迫っていた。全体的に大音響で吼えまくる演奏ではなく、曲の本質をしっかりと捉えた見本のような演奏でした。やはりここでもチェロの充実した響きが曲の魅力を格段に高めていたのは言うまでもない。弦楽器や木管なども大変充実しており、もっと評価されても良いオーケストラだと思う。久しぶりに「本場」の演奏を聞いたという感じでした。

10番の後にアンコールは難しいが、2曲披露してくれた。

 ショスタコーヴィチ 付随音楽「条件つきの死者」op.31より“ワルツ”
 ショスタコーヴィチ 映画音楽「司祭と下男バルドの物語」op.36より“バルドの行進曲”

ジャズ風の曲に映画音楽。ショスタコーヴィチの多能振りをいろいろ聴かせてくれた。アンコールとしては珍しく「意味のある」選曲だったと思う。

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