関西を中心としたクラシックコンサート報告サイト「大音楽惑星」
Home Concert Report コンサートのススメ CD Review リンク集 kotarinette
 大音楽惑星 ホーム > コンサート報告 > 2006年 > チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 with ヨーヨー・マ
クラシック・コンサート報告 コンサート報告
■年度別

■コンサートランキング
MANAITA.com
コンサート名・公演名

2006年6月2日 チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
with ヨーヨー・マ(兵庫県立芸術文化センター)

演奏曲目および評価

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」


演奏者(指揮者・ソリスト)

チェロ: ヨーヨー・マ
ヴィオラ: ギラード・カルニ
指揮: デイヴィッド・ジンマン

感想・短評

初めてのヨーヨー・マ。大物チェリストとはいえ、人気が高くチケットは早々に売り切れる。それでいて値段も高い。ここまで集客力のあるソリストはあまりいないと思う。演奏のうまさだけでなく、その人柄のよさも人気の理由のようだ。そんなヨーヨー・マと競演するのが、巷で話題のジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管だ。値段が超一流オケ並みに高い(S席22000円!)ので、それほどこの演奏会に魅力を感じていなかったが、たまたま最安席を押さえることができた上に、S席以外は瞬く間に売切れてしまったほどなので「これは行かねば!」という気持ちを強くさせた(笑)。CDでは多く聴いているジンマン=トーンハレ管だが、正直うまいと思ったことはないし、好きな演奏でもない。ただただ、人気のヨーヨー・マを一度でも聴いてみたいために会場に足を運んだようなものだ。チケットが即効で売れたこともあり(S席以外)聴衆は多いが、2階バルコニーや3階席などには空席が目立った。先日のモスクワ放送交響楽団でも同じような現象が起きていたので、席種の割りに値段が高いのだろう。席割の見直しが必要だろうね。

さて、前半はだいぶ聞き飽きた感のある「英雄」。ジンマンのベートーヴェンはベーレンライター版を使って話題を振りまいていたが、そんな版の違いは素人には分かりません(^^; オケは気持ち小編成で、金管は古楽器を使って演奏していた。その割には古楽特有の攻撃的なキレや厳しさはなく、意外にも穏やかな「英雄」だった。演奏者の女性比率が高いのも理由の1つなのだろう(ヴァイオリンはほとんど女性だった)。強弱にメリハリを持たせた演奏だったものの、残念ながらあまり印象には残っていない。単調になりがちな第2楽章は、たっぷりと歌わせていたのでとても聴き応えがあった。第3楽章はようやく古楽器特有の推進性を見せていてエキサイティングだった。変わった演奏というよりは、変わったオケだなという印象が強い演奏でした。

後半はいよいよヨーヨー・マの登場。曲はそれほど演奏機会のない大曲「ドン・キホーテ」だ。前半とは打って変わって大編成オケで、楽器も現代楽器に持ち替え。冒頭から耳を疑うほどの充実した演奏が繰り広げられる。二流、三流と思っていたトーンハレ管だったが、間違いなく一流の演奏だった。ヨーヨー・マの演奏が始まると物語がより説得力を持って迫ってきた。それほど役に入り込んだ迫真の演奏。ほとんど指揮者を見ず、コンミスと見つめ合うように演奏するヨーヨー・マ。それだけにオケとの融和性が高く、密度の濃い物語が展開していった。特に秀逸だったのは、第3変奏、第5変奏、そして終曲。チェロ1本でこれほどまでに惹きつけられたのは初めてだ。チェロに呼応するヴィオラもかなりレベルが高かったことも魅力の1つだった。

それにしても、全体にバランスが良く、全く非の打ち所がない演奏だった。リリースされていたCDを聴いても期待していなかっただけに受けた衝撃は大きい。立て続けにCDをリリースしている快進撃の理由が良く分かった。やっぱり演奏は生で聴かんと全然分からんものですね。

2006年コンサートカレンダーにもどる

Copyright